クランベールに行ってきます
王子はロイドの肩を軽く叩くと、笑顔のまま言う。
「いいよ、ロイド。顔を上げて。ロイドを罰したりはしないよ。もちろん、ユイもね。だって、ユイの言う通り、悪いのは僕だもの。心配かけて、ごめんね」
「寛大なご処置、痛み入ります」
ロイドはそう言うと、顔を上げた。王子はロイドの顔を見ると、益々おもしろそうにクスクス笑う。
「それにしても、話には聞いていたけど、ロイドって相当ユイの事が気に入ってるんだね。こんなに取り乱したの、初めて見たよ」
言われてみれば、確かに取り乱していた。だが、話に聞いたって、誰から?
結衣が眉をひそめて考え込んでいると、ロイドが振り返り、無言のまま睨んだ。言わんとする事は分かっている。結衣は王子を見つめて口を開いた。
「レフォール殿下、叩いた事は謝るわ。あと、暴言を吐いた事も。だけど、私は間違った事を言ったとは思ってないから」
「おまえは!」
振り返って結衣に詰め寄るロイドの腕を王子が掴んだ。
「いいって」
そして王子は、笑って結衣に告げた。
「ユイ、安心していいよ。父上には心配かけてないから。父上は全部知ってる。ね、ラクロット」
「は……はぁ……」
突然、話を振られて、ラクロット氏はしどろもどろに返事をする。——ということは、王子と王とラクロット氏はグルだったという事だろうか。
最初に王子の失踪を告げたのはラクロット氏だと聞いている。さすがにロイドも厳しい表情でラクロット氏を問い詰めた。
「ラクロットさんも最初から知ってたんですか?」
ラクロット氏は気まずそうにロイドを見つめて答えた。
「いえ、私が知ったのは、ユイ様が東屋でケガをされた後です。ヒューパック様が殿下を狙った犯行ではないかと言うので、陛下にご報告申し上げたところ、あまり事を荒立てないようにと、真相を伺った次第です」
「立ち話もなんだから、みんな座って話そうよ」
王子が促して、全員でソファに移動する。王子が上座の一人掛けのソファに座り、その横にラクロット氏は立ったまま控えた。結衣とロイドは先ほどと同じように二人並んで座る。
皆が注目すると、王子は順を追って、真相を語り始めた。