クランベールに行ってきます
そして王子はからかうように、ロイドの顔を覗き込んだ。
「もしかして、誰かいると思ったけど、深追いしてユイが危険な目に遭ったら困るから引き下がったの?」
「いえ、そういうわけでは……」
先ほどから、ずっとからかわれてばかりで、ロイドが借りてきた猫のように小さくなっているのが、なんだかかわいそうになってきた。
本当なら王子は、明日の朝ロイドのマシンで見つかっていたはずなのだ。ロイドも自分の手で見つけたかっただろう。
今まで、うまく隠れていたのに、どうしてここにいたのだろう。それが少し腹立たしくて結衣が尋ねると、王子は照れくさそうに笑いながら答えた。
「うっかり間違えちゃったんだ。最近、遺跡には行けないし、ロイドが遺跡と研究室を行き来してて、あんまりうろつけないし。退屈だから読みかけの本を取りに来たんだ。それで、どうせユイは真夜中まで帰って来ないと思って、お風呂も済ませようと思ったら見つかっちゃった。ラクロットにさっき聞いたけど、真夜中は明日だったんだね」
あまりにも、うっかり過ぎる結末に、結衣は一気に脱力した。
大きくため息をつく結衣をよそに、王子はさっさと話を切り上げた。
「じゃあ、僕は今日から部屋に戻るから、ユイはロイドのところに泊まってね」
「えぇ?! なんでよ! 王様のところにいればいいじゃない」
結衣が驚いて反論すると、王子は平然と言い返す。
「だって、見つかるまでって約束だったんだもん。第一、父上はイビキがうるさくて眠れないんだよ」
「じゃあ、なんで私はロイドのところなの? 客室でもいいじゃない」
「ユイは僕なんだよ。僕が客室に泊まるのは変じゃない。かといって、僕の部屋に僕と一緒に泊まったら、後々ばれたとき、僕の側室に決定しちゃうよ」
「どうして側室になるの?」
「正室はジレットだから」
「そうじゃなくて。どうして泊まっただけで側室なのよ」
結衣がため息と共に問いかけると、王子は意地悪な笑みを浮かべた。