クランベールに行ってきます
あっという間に一日が過ぎ去った。
真夜中のテラスで、結衣はロイドと並んで手すりに縋り、クランベールの夜景を眺めた。
見下ろすラフルールの街中には、真夜中にも拘わらず、ちらほらと人の姿が見える。よく見ると、中央の広場には、かなりの人が集まっていた。夜に同期を迎えるのは今日が最後だと、街の人たちも知っているのだろう。
ロイドが腕時計を見て、静かに告げた。
「始まるぞ」
直後、遺跡が派手に光の柱を立ち上らせた。同時にラフルールの街から、歓声と拍手がわき起こる。
結衣はチラリとロイドに視線を向けた。
以前、一緒に見た時は忌々しいと言っていたが、今は違うようだ。穏やかな表情で、目を細めている。
結衣はホッとして、遺跡に視線を戻した。
改めて、幻想的な光の柱に目を奪われる。思えばこの光は、自分とロイドを繋いでくれた奇跡の光なのだ。
やがて光が収束すると、ラフルールの街から「あー」というため息のような声が響いた。広場に集まる人々も、三々五々と家路につく。
結衣とロイドはどちらからともなく、顔を見合わせて笑みを交わした。
「次に見られるのは、三十年後だな」
「その時も、あなたと一緒に見られたらいいな」
「あぁ」
ロイドは結衣の肩を、そっと抱き寄せた。