クランベールに行ってきます
扉がノックされる音で、結衣は目を覚ました。すでに日は高く昇っているようだ。
隣にはまたしても、裸のロイドが眠っている。結衣は横からロイドを揺すった。
「ロイド、誰か来たわよ。起きて」
ロイドは目も開けず、面倒くさそうに結衣の手を叩いて命令する。
「ラクロットさんだろ。おまえが出ろ」
「んもぉ!」
結衣はベッドから飛び出すと、走って入口へ向かった。
扉を開けると、ロイドが言った通り、ラクロット氏が立っていた。
「おはようございます。朝食をお持ちしました。まだ、お休みでしたか?」
パジャマ姿の結衣を見て、ラクロット氏が尋ねた。結衣は苦笑して答える。
「いえ、起きました」
「お邪魔して申し訳ありません。今日はお休みだと伺いましたので、ヒューパック様の分もお持ちしました」
そう言ってラクロット氏は、二人分の食事が乗ったワゴンを部屋の中に入れると、頭を下げて帰って行った。
結衣はワゴンを転がしてリビングに運ぶと、寝室の扉を勢いよく開いた。
「朝食が来たわよ!」
「怒鳴らなくても、聞こえる」
てっきり、まだ寝ていると思ったら、ロイドはベッドの縁に座り、眠そうな顔でぼんやりしていた。
「あなた、今日休みなの?」
「あぁ。一ヶ月休んでないから、陛下から休めって言われた」
結衣は納得してため息をついた。
「それで、ゆうべ夜更かししてたのね」
ゆうべ午前二時に遺跡の同期を見物した後、ロイドは結衣を寝室に追いやって、自分は書斎にこもった。
ヒマになった途端、機械いじりをしたくなったのか、結衣が寝る前に覗いた時は、パソコンに向かって図面を描いたりしていた。
ロイドが、いつベッドに潜り込んだのか、結衣は知らない。