クランベールに行ってきます
「ロイドさん。同期開始一分前です」
ローザンのカウントダウンが始まった。
ロイドはもう一度、結衣を強く抱きしめ、頬に素早く口づけると、早足でガラスの筒を出て行った。そして、手際よく筒の出入口を閉じる。
「三十秒前です」
ロイドがコントロールパネルの前に立ち操作を始めると、王子とジレットがこちらを向いた。
「二十秒前です」
頭の上でライトが灯った。ロイドは尚も操作を続ける。
「十秒前です」
ロイドの動きが止まった途端、人捜しマシンがヴンと低くうなった。足元に小刻みな振動が伝わる。
「五秒前……四……三……二……一……開始」
マシンが一際高くうなり、足元の振動も大きくなった。結衣の周りを徐々に光が包み始める。
筒の外に目を向けると、ローザンが笑顔で軽く手を振った。ジレットが愛らしく微笑んで会釈する。王子は大きく手を振っている。ラクロット氏は静かに頭を下げた。
そして筒のすぐ側で、ロイドが淡く微笑みながら、熱い眼差しを送っていた。結衣はそれを見つめ返す。
もっとずっと見ていたいのに、周りの光が強さを増して、ロイドの姿を白く覆い隠した。
あまりの眩しさに、結衣は目を開けていられなくなり、両手で顔を覆う。
いつの間にか、涙が溢れていた事に気付いた。