クランベールに行ってきます
2.セクハラエロ学者
ラクロット氏を見送った後、ロイドは再び結衣の側に戻ってきてしゃがんだ。
自分の理解の範疇を超えている事態に、半ば放心状態で結衣はロイドに尋ねた。
「私、日本に帰れるの?」
「現時点では、何とも言えない」
「やけに冷静なのね。この国ではよくある事なの?」
「過去に何度かあったらしい。それにオレの研究課題のひとつでもあるしな。おまえにはしばらくの間協力してもらう」
ロイドは先ほどラクロット氏に話した事を結衣にも告げた。
結衣を転送してしまった原因が判明するまで、この装置は使えない。
また誤動作を起こしては困るからだ。
王子の捜索は、引き続き転送できない機能縮小版の検索マシンで行う事になる。
だが、機能が縮小されている分、正規版に比べておそろしく時間がかかる。
そのため、人による捜索隊も結成された。
王子の不在を公にするわけにはいかない。
捜索隊も信頼できる少数精鋭となる。
こちらも時間がかかる事は必至だ。
「そこでだ。殿下が見つかるまでの間、うり二つのおまえに身代わりを演じてもらいたい」
有無を言わさぬ命令口調にムッとして、結衣は間髪入れずに拒否する。
「無理よ! 王子様って男でしょ? 私は女なのよ」
「確かにそのようだな……」
ロイドは結衣の胸の辺りを見つめた。
そして、
「体型的には大して問題ないと思うが……」
と言うと、指先で結衣の胸をツッと撫でた。
ショートパンツと、ノーブラにキャミソール一枚のお昼寝スタイルの結衣は、生の胸を撫でられたような衝撃に背中の真ん中に悪寒が走った。
「触らないでよ、エロ学者!」
咄嗟に胸をかばってロイドを叩こうとしたが、ヒョイとよけられ空振りに終わった。
悔しいのでロイドを睨んでわめく。
「どうせ胸小さいし、背高いし、男と変わらないわよ! 昔から、何食べてそんなに大きくなったの? とか、毎日牛乳飲んでるの? とか、聞き飽きてるわよ! 牛乳なんて大嫌いよ!」
ロイドは呆気にとられて結衣を見つめ嘆息した。