クランベールに行ってきます
結衣が二冊目の絵本を読み終わる頃、ロイドが研究室に戻ってきた。
「土産だ。二人で食え」
そう言ってロイドは、持っていた紙袋を結衣に突き出した。結衣は席を立ち、袋を受け取りながら顔をほころばせる。
「パルメのお菓子?」
「あぁ」
ロイドは不服そうに顔を背けた。
結衣が袋を開けて中を覗くと、そこにはシュークリームが二つ入っていた。相変わらず、厨房のお菓子はもらわない事にしているらしい。ロイド曰く、彼が満足するだけもらうと、お菓子がなくなるからだ。
「ローザン、お茶にしよう」
「はい」
結衣が声をかけると、ローザンは嬉しそうに返事をして立ち上がった。
「あなたもお茶は飲むでしょ?」
「砂糖十五杯でな」
「はいはい」
ロイドが実は”超”の付く甘党だというのを知ったのは五日ほど前だが、未だにこの砂糖十五杯は馴染めない。
結衣がお茶を淹れると、三人は部屋の隅の机を囲んで座った。結衣とローザンは紙袋からシュークリームを取り出し、手づかみでそれを頬張る。
「これ、私が作り方教えたの」
「いいですね。こうやって手づかみで食べられるお菓子って」
極甘のお茶をすすりながら、ロイドは二人を黙って見つめる。物欲しそうな視線に気付いて、結衣は一応なだめてみた。
「今度、あなたにも作ってあげるから」
「そのサイズなら二十個だ」
「はいはい」
苦笑して、結衣が再びシュークリームを食べ始めると、ロイドはまだ何か言いたそうにこちらを見ている。