クランベールに行ってきます


「何?」

 結衣が尋ねると、ロイドは呆れたように見つめて、口を開いた。

「おまえ、いつも甘いもの食って、座ったままほとんど動かないのに、なんで太らないんだ?」

 毎日、砂糖十五杯入りのお茶をガブガブ飲んでも、太らない人に言われたくない。

「知らないわよ。体質なんだから」

 ムッとして結衣が頬を膨らませると、ロイドはさらに言う。

「それにしたって、抱くたびに細くなってる気がするぞ」

 途端にローザンが、喉を詰まらせて激しく咳き込んだ。

「汚いな、おまえ」

 ロイドは自分のカップを持ち上げて、ローザンから遠ざける。

「ちょっと、大丈夫?」

 結衣が覗き込むと、ローザンはひとしきり咳き込んだ後、お茶を一口飲んで息を整え、ロイドと結衣を交互に見つめて問いかけた。

「お二人の仲は、そんなとこまで進展してたんですか?」
「違うわよ!」

 結衣は頬を赤らめ、思い切り否定すると、ロイドを睨んだ。

「もう! あなたが誤解を招くような事を言うから!」
「ウソは言ってない」

 しれっとして、そっぽを向いたロイドをチラリと見て、ローザンは困惑した表情で結衣を見つめる。

「不可抗力よ。たまたま何度か、抱きしめられるような形になっただけよ」
「はぁ……」

 結衣が苦しい言い訳をすると、ローザンは納得したようなしないような表情で、小さく頷いた。
 不可抗力というよりは、ほとんどロイドのセクハラのような気がする。


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