クランベールに行ってきます
結衣は気を取り直して、話題を変えた。
「パルメの用事は何だったの?」
ロイドはお茶をすすりながら首を傾げる。
「調理機械の不調だと言われて見に行ったんだが、どこもおかしくない。不調というより怪奇現象っぽかったな」
結衣とローザンは同時に顔をしかめた。
「怪奇現象ですか?」
「今度は厨房に幽霊が出たの?」
「幽霊じゃない」
パルメが言うには、調理機械の中から、出来上がった料理が忽然と消えるらしい。誰かが持ち出したのかと思い、厨房の者に訊いても、皆一様に知らないと言う。
それを体験したのは、パルメだけではなく、他にも何人かいるという。まさかとは思うが、機械に転送機能でも付いているのではないかと、ロイドに確認してもらったようだ。
「転送機能なんて付いてるの?」
結衣が尋ねると、ロイドは眉をひそめる。
「付いてるわけないだろう。そんな無意味なもの」
「……え……」
無意味なものを色々作っている人が、何を言う。——とは言わない事にしておいた。
「誰かが内緒で、こっそり犬猫を飼ってるんじゃないですか? そのエサに料理を持って行ったとか……」
ローザンが仮説を述べると、ロイドはあっさり否定した。
「違うだろうな。消えた料理は犬猫が食うようなものじゃなかった。第一量が多すぎる。それに犬猫にやるなら、料理を丸ごと持って行くより、肉や魚の切れ端でも持って行った方が、騒がれずに済むじゃないか」
「そうですねぇ。じゃあ、人間?」
ローザンがそう言って苦笑した時、結衣はふと閃いた。