クランベールに行ってきます
ロイドは再び頭をガシガシかいた。
「仕方ない。変死体になってたら面倒だから、そっちも様子を見に行くか。ほら、仕事に戻るぞ」
そう言ってロイドは、ローザンの背中を叩くと、コンピュータの前へと促した。
結衣は二人から離れて、まっすぐに窓際の椅子へ向かい、絵本を手に取る。
コンピュータの前に座った途端ローザンが、人捜しマシンの方へ足を向けたロイドを呼び止めた。
「ロイドさん、時々出てくるウィンドウなんですけど、出ないようにできませんか? ちょっと、うっとうしいんですよね」
ロイドは足を止めて、ローザンを振り返る。
「うっとうしいって、日に一、二回のもんだろ?」
ロイドが問いかけると、ローザンは思い切り顔をしかめた。
「えーっ? そんなもんじゃありませんよ。間隔にはムラがあるんですけど、何度も出ますよ。数えてないので正確には分かりませんが、日に十回以上は出てます。今も、ちょっと話してる間に三つも出てますし」
「そんなに出てるのか?」
ロイドは足早に歩み寄ると、コンピュータの画面を覗き込んだ。
絵本を持ったまま立ち尽くして、二人の様子を見ていた結衣も、何だか気になって、側に行くと後ろから覗き込んだ。
画面の真ん中に、文字の書かれた小さなウィンドウが三つ、重なるように表示されている。ロイドがそれを、一つずつ確認しながら閉じていくのを、横でローザンが読み上げた。
「ジスクール……ベイシュヴェル……ラグランジュ……。なんですか? この地名……」
「探知機を設置した遺跡だ。他に、カノン、ディケム、ロングヴィル、ラフルールにも設置している。三年前から、時空の歪みを観測してるんだ」