クランベールに行ってきます
ロイドは遺跡調査に同行している内に、謎の装置が作動した時、微妙な時空の歪みが生じる事を発見した。約三十年に一度、全遺跡の装置の活動が活発になる時期がある事は、すでに考古学者の間では知られている。
時空の歪みと装置作動の規則性を探る事で、新たに作ろうとしている、時空移動装置に応用できるのではないかと考えたのだ。
「時空移動装置って、何に使うんですか?」
ローザンが最も至極な質問を投げかける。結衣も同じ事を考えたが、答えは大体想像がついた。
「他の世界に行けたら、おもしろいと思わないか?」
想像通りの答えを、大真面目に言ってのけるロイドを見て、結衣は苦笑し、ローザンは微妙な表情で首を傾げながら、顔を引きつらせる。
ロイドは二人の反応を気にした風でもなく、画面に向き直ると、新たなウィンドウを開いた。そこには棒グラフが表示され、左から三分の一辺りから、急に棒の長さが長くなっている。
「なるほど、十日前から多くなってるな」
「あなた、自分でそこに座ってる時に気付かなかったの?」
結衣が尋ねると、ロイドは振り返ることなく、表示を切り替えながら答えた。
「通知が来るのはいつもの事だし、他に気をとられてて気にしてなかった。……全遺跡から頻繁に来てるな」
表示は折れ線グラフに変わり、途中から全ての線が急角度で上向いている。
ロイドは画面を見つめたまま、腕を組んだ。
「妙だな。過去データからすると、遺跡の活動期はもう少し先のはずだ」
「十日前っていうと、レフォール殿下が行方知れずになった日ですよね」
ローザンの指摘に、ロイドは再び表示を切り替えた。
「時間は……午後二時十分にラフルールから。それ以降増えている」
「午後二時って、もしかして……」
結衣がおずおずと口を挟むと、ロイドは振り返り、まっすぐ見つめた。
「おまえが現れた頃だ」
その声にローザンも結衣を振り返る。二人に黙って見つめられ、結衣は思わず目を泳がせた。