[修正版]草食系彼氏
「ノロケで悪い?で、そっちはどうなの?名前、呼んでもらえた?」
「うわ、開き直らないでよ。んー、ダメだった。まあ期待はしてないけどさ」
私が苦笑しながら言うと陽菜も、だろうね、と笑った。その笑顔を見るたびに、かわいいな、といつも思う。ぱっちりした黒目がちな瞳は、目上ぎりぎりでばっさり切られた黒髪によく映える。本当に、吏人なんかには勿体ないくらいだ。
「あっ、それでさあ……」
「起立」
隣の教室から、委員長の号令が聞こえてきた。楽しい時間は終わり、教室ではしゃいでいたみんなも、それぞれ部活に向かう。
「それで、何?」
「ううん、後でメールするね。じゃあバイバーイ」
「また明日ー」
陽菜が荷物を持って吏人のところへ行くのを見送り、私も自分のスクールバッグを肩にかけた。来季もエナメルバッグを持って教室を出ようとしている。