[修正版]草食系彼氏
「付き合ってないよ。ただの噂だから」
笑って言ったつもりだけれど、ひきつっていたかもしれない。そう……、と言って、彼女はやっと笑顔になった。
「あたし、鳴神紗理奈っていうの。よろしくね」
さっきの表情とのあまりの違いが少し怖くて、うん……、と言うことしかできなかった。
学校を出る直前、玄関で男子と話している来季と目が合ったけれど、すぐに逸らした。いつも少しは話していたから、変に思ったかもしれない。
でも一応、遠くからだけれど手を振った。表情は見えなかったけれど、振り返してくれた。話せないのは寂しかったけれど、それだけでも嬉しかった。
――大丈夫、だよね……。
いつもより帰るのが早いから、道は明るいはずなのに、私の心は暗くかげっていた。