[修正版]草食系彼氏
何がなんだかわからない私に陽菜が慌てて近づき、事の経緯を教えてくれた。私は荷物を机に無造作に置いて、陽菜の話を理解しようとする。
それはまとめると、私が紗理奈の好きな人を盗ったことになっていること。それを紗理奈が、今のようにいろんな人に広めていること。大体このような内容だった。
「えっ?何それ……」
私の頭に驚きと疑問が一度に来て、真っ白になってしまった。しかし何よりも、ある期待が私を強く揺さぶっている。信じられないほどの、期待が。
「ねぇっ!来季は……」
「何?」
いつの間にか教室にいた来季が、キョトンとした顔で私を見た。そういえば、来季と話すのは久しぶりだ。今は喜んでる場合ではなさそうだけれど。
「来季……」
「ん?」
ついさっきまではいなかったのだろう。全くそういう素振りを見せない。それとも気を使っているのだろうか。……いや、きっと前者だろう。
周りの視線が、私達に集中する。
「ちょっと……来て」
私は来季の腕を引き、逃げるように教室を後にした。