[修正版]草食系彼氏

 無人の空き教室に入って、扉を閉める。廊下のざわめきに反して、ここはとても静かだ。

「来季。一昨日、紗理奈ちゃんに……」
「ああ、うん」
 来季も、さすがに何の話だかわかったようだ。胸が苦しいくらい、心臓が高鳴った。舌を噛まないよう気をつけて、私は声を絞り出す。

「それで、来季はっ、どうするの……?」
「……」

 やはり、いくら気をつけてもダメだった。声が震えて、うまく出せない。沈黙の中、私の鼓動ばかりが続いて、私はさらに不安になる。

「……った」

 沈黙を破ったのは、来季の声だった。

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