[修正版]草食系彼氏
ショックだった。
シューズに関しては、履けなくても、普段履いている靴で代用できる。私がショックを受けたのは、シューズのことではなかった。
とうとう、部活内の嫌がらせが始まったことだ。
だって、シューズの在処を知っているのは、部活仲間だけだったのだから。誰も味方がいない状態が、さらに悪化するなんて……。元々辛かった部活が、さらに辛くなった瞬間だった。
涙腺が痛い。それよりもっと、胸が痛い。
気付くと私は、シューズを握りしめて教室へ走っていた。
ドアを開けた音が、静かな教室に響く。教室には、当たり前だけれど誰もいなかった。窓から野球部が校庭を走るのが見える。
「……っ」
私はその場にしゃがみこんで、泣き始めた。不安で、不安で、しょうがない。誰か、私のそばにいて……。
「誰かいるのか?」
後ろから突然聞こえた声に、思わず体をビクつかせる。そうだ、扉を閉めるのを忘れていた。私は無防備な表情のまま、声のした方を向いた。
「……高?」
「ん、柊?えっ、お前泣いてる!?」
高が驚いた表情でこちらを見下ろしていた。
「な、泣いて、ないっ!」
慌てて顔を拭った。高に泣いているなんてバレたら、絶対にからかわれるだろう。しかし、次の高の言葉は、余りに予想外だった。