[修正版]草食系彼氏
スクールバックを廊下のロッカーに片付けて教室に戻ったら、来季が自席で本を読んでいた。何だか気になったから、話しかけてみる。
本当は、話すための理由が欲しかっただけなのだけれど。
「来季、何読んでるの?」
「ん」
そう言ってブックカバーを外し、本の表紙を見せてくれた。外国のファンタジーの和訳版のようだ。私が見たのを確認してから、またカバーを付け直す。
「ふうん……。その本、おもしろい?」
「うん」
嬉しそうに言う彼を見て、私は、そっか、と笑った。
端からは、無愛想な男子にちょっかいを出すお節介な女子、に見えるのかもしれない。
でも、ある意味正解だ。話しかけたり、誘ったり、行動するのはいつも私からだから。来季の方から話しかけられることは、ほとんどない。というか、ない。
それを知っていながらの告白だったから悔いは無いし、付き合えただけでも充分嬉しい。女子が苦手ってところも、かわいい。
そう、思っていたのに。