[修正版]草食系彼氏

「ううん、何で?」
「最近、帰りに会わないから」

 その言葉が、“会いたかった”と言ったように聞こえて、私はどうしようもなく切なくなる。真実を言えないもどかしさもこめて、ごめんね、と呟いた。

 そのとき、私の頬に冷たい何かが落ちた。

「雪……」
 どうりで寒いわけだ。思わず身を縮めていたら、来季が上着を貸してくれた。

「来季、寒くないの?」
 来季は余裕そうに頷いて、それから大きなくしゃみをした。

「やっぱり寒いんじゃん」

 笑いながら、上着を半分来季の肩にかけた。が、私より高い位置にあるのですぐにずり落ちてしまう。私はそれを何度もかけ直しながら、来季のことを思った。
 外の空気は冷え切っていたのに、私の心は、すごくすごく暖かかった。

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