[修正版]草食系彼氏
「……否定しないの?」
「あのね、えっと……これは、その……」
何と言えばいいのかわからない。普段からボキャブラリーが豊富なら、このような状況でもペラペラと説明できるだろうが、あいにく私は持ち合わせていなかった。確かに付き合ってるけれど、理由があるし、第一、こんなに広まるなんて考えてなかった。
聞いてから陽菜は、ひどく傷ついた顔をした。それから泣きそうな声で、
「紫苑の気持ちなんて、そんなものだったんだ?紗理奈に来季を盗られても、いいんだ」
「ち、違っ……!」
「違わない!それに……」
陽菜は薄い唇を噛み締め、顔を歪めながら、私に向かって叫んだ。
「相談くらい、してよ!」
陽菜の大きな目から、とうとう、涙がポロポロとこぼれ落ちた。教室の入り口には、いつの間にか人だかりができている。
違う、違う。今日、言おうと思っていただけだから。言いたいことは次々と頭に浮かぶのに、何一つ言葉にならない。
何も言えない私に、陽菜は「もういい」と言い放って、そのまま教室を出ていった。