[修正版]草食系彼氏

 そのとき、「紫苑!」と高に呼ばれた。

「部活終わった?」
「うん、今終わったとこだけど」

 じゃあ、と足元に置かれたエナメルバッグを肩に担ぎ上げる。

「一緒に帰らねえ?」

 ただ白いだけの雪道を、並んで歩く。ずっと憧れていた光景なのに、隣を確認する度に悲しくなる。これでいいはずなのに。
 それに、高はとても優しくなって、口を交わす度に喧嘩していた頃がかなり昔のように感じる。さっきだって、一緒に帰ろう、って……ん?
 私はふと足を止めた。何がしかの違和感があったのだ。

「どうした?」

 高も私に合わせて立ち止まる。内容にばかり気をとられて気がつかなかったけれど、さっき……。

「名前呼んだ?」
「え?ああ」

 高は率直に、
「当然だろ?彼氏なんだし」

 恥じらいもせず、当たり前のように言った。平然と答える様子に、私は少し顔が熱くなった。

 何だ、私ばかりが気にして、恥ずかしい。

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