[修正版]草食系彼氏
突然俯いた私に、「どうかしたか?」と聞いてきたけれど、「何でもない」とさらに顔を背けた。
「訳わかんねえ」
ハハハ、と、高が笑う。この調子ならきっと、私を意識なんてしていないのだろう。何せ、関係だけの彼氏なのだから。
一瞬、何故か胸がズキンと痛んだ。締め付けられるのとは少し違う、刺すような痛みだ。
気がつけば、私は走っていた。
雪道に足はとられるし、スクールバッグは重いしで、速さ的には駆け足に過ぎないかもしれないが、走った。後ろから私を呼ぶ声が聞こえたが、立ち止まることはなかった。
それより自分が、怖かったのだ。
私は今、何を考えた?一秒でも一瞬でも、考えてはいけないはずだというのに。
思い出すのも嫌だ。走ったせいか、呼吸が乱れる。私は肩で息をしながら、辺りの雪を手にとり、顔に擦り付けた。それでも、火照りは収まらない。
早く消えて。早く。
雪の冷たさで赤くなった頬は、それでも、まだ熱を持っていた。