[修正版]草食系彼氏

 扉を閉めると、中はとても静かだった。ときたま廊下から聞こえる声が、遠くに感じる。

 そしてここに、私達は二人きりなのだ。湧き上がる不安に押されつつ、緊張は抑えられなかった。手が震えて、声が震えて、うまく頭が回らない。何を言うのかも、忘れそうになる。

 ああそうだ、と私は気付く。来季と、別れなければならないのだ。

 気持ちに比例して、ついうつむいてしまう。ここまで来て、決心が鈍るだなんて。普通なら、他の人と付き合った時点でもうすでに別れているのだから、迷う必要なんてないというのに。

 ――言おう、言わなきゃ、言え、言え、言え!

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