[修正版]草食系彼氏

 帰りのホームルームが終わるとすぐに、ほぼ全員が部活に急ぐ。でも私達の担任は話が短いから、他のクラスよりも終わるのが早いので、つまり少し余裕がある。私は、この空き時間が一番好きだった。

「紫苑っ」
 陽菜に後ろから抱きつかれて、私は体を少し前に傾ける。

 彼女こと朝霧陽菜は私の親友だ。そして来季の友人、矢吹吏人の彼女でもある。二人は私達より少し早く付き合ったくらいで、年月に大した違いはない。でもすごく仲が良くて、お互いにお互いを愛し合っている。そんな感じがする。

 私が、どうしたの、と聞くと彼女は満面の笑みで口を開いた。

「あのね、今日吏人にかわいいって言われちゃったあ」
「ああうん、よかったねー。ノロケはいいから」
 ふざけて言いながら、でも本音は、少しだけ羨ましい。

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