泣き顔にキス
一瞬か、それとも数分か。
ふいに体が軽くなった。
彼の感触がなくなって、不思議に思いそっと目をあける。
「…やめる」
彼は冷たい目であたしを見ていた。
「…どうして?」
「なんとなく」
その返事に、とてつもない不安が襲う。
これで何回目だろう。
彼は何度となくあたしに触れてくるけど、それ以上先に進んだことはない。
最初はあたしを想ってくれてるのかと思った。
でもその理由はいつも“なんとなく”。