泣き顔にキス


「俺が甘いの好きなの知ってるんだから、ミルクチョコくらい常備しててくださいよー」



彼がぐいっと顔を近づけて不満そうに言う。

その近さに…ドキッとなんて、してないから。



「何でレンくんのチョコをあたしが買わなきゃいけないの」



押し退ける腕に思わず力が入ってしまったのは気のせいだと思う。

…だって、初めは背中にまわされた彼の手があたしの腰におりてきたから。


彼は気にしていない様子で「じゃあご飯行きませんか?」とあたしに笑顔を向けた。

じゃあとか話繋がってないし、とも思ったけど、口には出さずにあたしも笑顔を作って、大学を出た。


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