泣き顔にキス
「歌ったねー」
「俺喉やばいかも…」
定位置は変わらないまま、他愛のないことを話しながらの帰り道。
もう12時を過ぎて、終電はない。
なーんて、電車通学してるわけでもないのに。
あたしのちょっと憧れの言葉を言ってみたりする。
「レンくんはどうやって帰るの?」
あたしは近くのアパートだからいいけど、彼の家は少し遠い。
「うーん…アスカさん送ってから考えます」
「いいよ、あたしは別に送ってくれなくても。もうすぐだし」
「ダーメ。危ないから」
「でも」と言いかけたあたしの方を向いて、彼は小さく笑った。
「アスカさんのとこに泊めてくれてもいいんですけど」
「え…」