月と夕焼け
遥佳
まさか、弟に「嫌なら嫌だと言えば良い」なんて言われると思ってなかった。
いつの間に、あんなに大人な意見が言えるようになったんだろう。
ほんとに…
しっかりし過ぎてて困るよ。
「遥佳くん?」
「あ、ごめん。聞いてなかった」
「…どうしたの?疲れてる?」
「いや、疲れてるとかじゃないんだ」
ニコッと、心配をかけないように微笑んでみる。
「遥佳くん…?」
「ごめん、で…お父様はなんて?」
「あ、うん。でね…」
彼女の名前は松永美乃梨。
美乃梨の父親は、日本の経済を動かすこともできる裏社会の大者だ。
普段は普通に気の良い会社、社長をやっているんたけど…。
「…美乃梨は良いの?」
「え?」
いきなり話しを変えた俺に対して、不思議そうな顔をする。
「俺と婚約」
「…だって、仕方ないじゃない。私たちが結婚しないと日本が崩れるわ」
「俺にはそれが父さんや、お父様たちからの脅しに聞こえるよ」
美乃梨に笑って見せる。
美乃梨は気まずそうに伏せてしまった。