月と夕焼け
「…椿って怖いよな」

「椿?」

「真っ赤じゃん。まるで他人を威嚇してるみたい」

「え、何?」

「なのに、フワッと笑っちゃってさ…。笑顔が地味に引きつってるの」

「遥佳くん、何の…誰の話?」

「え?」


ハッとする。
確かに誰の話をしてるんだ、俺は…。

今日は美乃梨に謝ることばかりしている。


「ごめん。朝、椿が目に入ったもんだから」

「遥佳くん、椿が好きなの?」

「いや、別に?」

「良く分んないなぁ」


美乃梨は眉毛を八の字にして、困り顔のまま笑っている。


「西城ー!!」

「え?」


窓の外から、俺を呼ぶ声。
覗くと友人がはしゃいでいた。


「お前も来いよ!!」

「何してんの?」

「水遊び」

「バカか、お前らは!!」

「お前にバカだけは言われたくないよ」


俺のまわりで一番、頭の良い奴が叫ぶ。
まわりの奴がギャハハと大声で笑っている。


「…遥佳くんのお母様がいたらはしたないとか、西城家が…って言われるけど、今はお母様はいない」

「行ってくる」


美乃梨に手を振りながら校庭に向かった。
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