月と夕焼け
「あはは…本当にアホだな」

「教頭がな」

「お前らああいう時だけ、すぐにチームワーク良くなるからずるいよな」


テンションが高いと、なんでも出来そうになる。
でもしてしまうと、西城家の名前が汚れると色々我慢して生きて来た。


「それも昔から」

「だいたい、俺が犠牲になんだよな」

「仕方ないだろ」

「ほんとほんと」


笑い合いながら、俺は教室の中に美乃梨がいないのに気が付く。


「なぁ、美乃梨は?」

「美乃梨さん?出て行かれましたけど…」

「そ、ありがとう」


出て行った?
俺は、不安になって立花たちに一言断り、教室を出る。

とりあえず探さないと。
なぜか知らないけど、俺は走っていた。


「…っ、美乃梨!?」


美乃梨を見つけたのは、図書館の前。

美乃梨は不思議そうに振り返った。


「教室にいないから…」

「ちょっと調べモノがあって」

「…泣いてるかと、思った」

「大丈夫。泣かないわ」


美乃梨が微笑む。
美乃梨は本当に良い女だ。
良い女すぎて、困る。
< 16 / 72 >

この作品をシェア

pagetop