月と夕焼け
佳奈
今日は久々のお休みの日。
遥佳様が「椿だ」と言った日から一週間とちょっと遥佳様に会っていない。
庭係だし、遥佳様が立ち止まってくれないと話せない立場だって改めて感じてしまった。
「ごめん、遅れた~」
「あ、久しぶり。元気?」
「元気、元気」
中学のときの親友のアスミ。
高校には行けなかったから、高校の話をアスミから聞くのが私の休日の過ごし方。
「で、お坊ちゃま君とはどうなったの?」
「どうもならないよ。前に初めて話せて、名前聞かれた」
「まぁ、向こうはあんたを雇ってる側だしね。もし色恋沙汰になったら辞めさせられるかも…」
「それは、困る」
「ごめんね。冗談だから」
でも、それが現実。
そもそも遥佳様と私が色恋沙汰なんて有り得ない。
「遥佳様、冬に婚約発表されるらしいし」
「は?」
「まだ婚約してないけど、その方ともとても仲が良くて…」
本当に羨ましい。
私は、どんなに頑張ってもあの位置にいけることはないから…。