月と夕焼け
「あんな人、好きになって私…バカだね」

「好きになるのは自由だから」

「…ん、ありがとう」


私は、嫉妬はしない。
誰にだって勝てないって分かっているから。
でも、空しくて泣きたくなる日もある。


「遥佳様ね、誰にでもああやって笑うの。敵を作らない様に…ずっと笑顔」

「そういう生き方しかできないんでしょ?」

「生き方…」


自分の親にまで愛想を振りまく遥佳様。
優人様は、そういうのから逃げるのが上手いらしい。

要領が良いんだと思う。


「うわっ、なんの迷いもなくブランド店入って行ったよ。カバン見てる~…」


アスミが遥佳様たちの行動を実況するように話している。

美乃梨様の誕生日でもない。
なんかあるのかな?

そう思いながらも、私にはそれを確かめる術もない。


「次は財布?何してんのかな」

「さぁ…。なんかあるんじゃない?」

「働いてるのに知らないの?」

「一番下っ端だからね」


へぇ~、とアスミが声を出す。
アスミの目は二人を捕らえたまま。
もちろん私も、二人から目が離せない。
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