月と夕焼け
「…美乃梨が言ってたんだよ。親を裏切れないって」

「会いたいなんて、どう考えてもただのわがままだろ。言わない美乃梨は本当に強いよ」

「純は、そうやって美乃梨を傷付けるのだけ上手くなるな」


西城が少し声のトーンを落として言う。

美乃梨が傷付いてるのは分かってる。
ただ、俺はそれを助けてやれないんだ。


「そうする事しかできなかった。もう2年、美乃梨と連絡すら取ってないんだ」

「それでもお前の1番は美乃梨だろ?」

「当たり前だよ。美乃梨を幸せにするのは俺だって、ずっと思ってた。今でも思ってるよ」

「純、また電話する。俺とお前が会うのは別に禁じられてはない。日本に帰って来たことを美乃梨に知らせなかったら良いだけの話しだ」


西城、ありがとう。

日本が恋しかったんだ。
美乃梨には会いたい。
だけど、結婚する西城たちに対して祝福の言葉を言いたかったのも事実なんだ。


「なぁ、西城…」

「何?」

「俺な、美乃梨のこと愛してる」


涙が溢れた。
久しぶりに言葉にした気持ち。
西城にだから言えたその言葉に涙が止まらなくなった。
< 30 / 72 >

この作品をシェア

pagetop