月と夕焼け
「佳奈?重いんなら持つよ」
「大丈夫です」
「ふはっ、佳奈ちゃん可愛いね」
「え!?」
俺が佳奈を心配すると、純が軽く佳奈をからかう。
「ほら、持つから貸して」
佳奈から純の荷物を奪う。
「純も自分で持てよ」
それを純に返すと、佳奈は申し訳なさそうな顔をした。
「すみません…そのくらいの荷物も持てなくて」
「佳奈は女の子だから、重い物は持たなくても良いの」
「でも、私の仕事がなくなってしまいます」
「じゃ、これからは軽いのだけ持ちな。重いのは俺が持ってあげるから」
「遥佳様…すみません」
佳奈が深々と頭を下げる。
「そこは、謝るんじゃなくて『ありがとう』って言う所だから」
俺が苦笑いすると、佳奈も同じくらい苦笑いをしていた。
確かに、メイドからしたらありがとうなんて言う場面ではないのかもしれない。
「でも…」
「でもも禁止ね」
俺が笑うと、佳奈は本気で困った顔をしてしまった。