月と夕焼け
「西城、佳奈ちゃんが可哀相だろ。ていうかお前そんなキャラだっけ?」

「キャラとかじゃないだろ」

「佳奈ちゃん必死で可哀相だから」


「なんか佳奈には無理させたくないんだよ」

「お前が無理させてるんだろ?」


純が何とも思ってないようにそう言う。

確かにそうだ、佳奈が頑張ったりするのは西城家のメイドだからなんだ。


「あの、私は大丈夫です。すみません…お茶をお持ちします」


そう言って佳奈はキッチンの方に向う。
俺は自分の部屋の前で止まって、純を見た。


「…幸せになる権利は、皆平等なんだよ」

「は?」

「良いから、頑張れよ!!」


ドアを開けて無理矢理、純を部屋の中に入れて、ドアを締める。

部屋に入った正面に美乃梨が気に入っているソファーがある。

美乃梨はきっとそこにいるはずだから。




俺は、この時何も考えていなかった。

ただ、美乃梨の笑顔が見たかっただけなのに…。






純が入った後の部屋からは物音一つしなかった。

不審に思って、俺はドアを開ける。
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