月と夕焼け
二人はただ突っ立って見つめ合って、美乃梨は涙を流していた。
「なん、で…」
「え?」
言葉を発したのは美乃梨で、純なんて見ずに大きな瞳で俺を見ていた。
「遥佳くん、私…遥佳くんと結婚するの。子ども出来て、幸せになって…その未来に純くんなんていない」
その言葉が嘘だと、何故かすぐに分かってしまった。
「純と結婚して、家族皆で笑い合いながら幸せになるのが美乃梨の夢じゃないの?」
「…違う、そんなの違う!!私は純くんには二度と会わないって決めてたの。もし、遥佳くんと結婚しなくても…」
「それでも、美乃梨が愛してるのは純だけだろ?」
高校生が愛なんて、軽いのかもしれない。
でももうすぐ婚約させられる俺たちには大切な言葉だ。
「西城、もう良いよ」
純は俺にそういうと、その場にしゃがみ込んでしまった。
「純?」
「なぁ、美乃梨…俺はお前が好きだ。好きで好きで、この2年でまたそれを自覚した」
純の声が震えている。
泣いているんだと分かるまでに時間はかからなかった。