月と夕焼け
だけど、佳奈は首を横に振った。


「わきまえていないと、ダメなんです」


この時、当然だけど佳奈が俺を好きなんて知らなくて、俺は佳奈と純粋に話がしたくて、仲良くなりたくて気を使う佳奈に焦れったさも感じていた。


「なんで?」

「私と遥佳様は違い過ぎます」

「違うことなんてないと思うけど」

「あります。遥佳様からは見えなくても私からは違いがはっきりと見えます」


この時、俺は初めて佳奈を可愛いと思った。
切なそうに、いつものように申し訳なさそうに笑う佳奈を愛しいと感じた。


「よし、佳奈こうしよう!!」

「え?」

「俺と2人の時は、ため口で良いよ。歳だって一つ違うだけなんだし」

「でも…」

「あ、でもは禁止だからな。約束しよう?俺らは仕事とかの関係の前にただの友だち。良いだろ?」

「は、い…」

「はい?」

「うん」


照れたように佳奈が笑った。

この決断が、後々俺たちを苦しめて佳奈があんなにも悲しい思いをすることになるなんて思ってもいなかった。
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