月と夕焼け
「そうかな?」

「そうだよ。良いパパさんなんだから」

「買い被りすぎ」

「いや、そうでもないと思うけど」


西城が何かを思い出したような顔をする。


「お父様の望みは、美乃梨の幸せなんだよ。本当は提携がどうとか、お金の流れがどうとかなんて関係ないんだ」

「…それに松永と秋吉が仲が良くないのはうちの親父のせいらしいし」


美乃梨をチラッと見る。

これは聞いただけの話だけど、親父たちは学生の頃は仲が良かったらしい。
なのに、2人がそれぞれの会社の社長になった時、うちの親父が松永家を裏切った。

と、母親に聞いた。


「それは、私も聞いたことはあるけど…。それを許せなかったのはパパだから」

「どれほどの裏切りだったのか俺たちは知らない。だから、それを聞く権利と美乃梨と結婚する権利が俺たちにはあるはずなんだ」


西城たちがいることを忘れ、美乃梨に言う。
でもそこで、西城がため息をついた。


「純、落ち着けよ。そんなに難しく考えるな」

「え?」

「事はきっとそんなに難しくはないよ」
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