月と夕焼け
だけど、純さんの親はよっぽど松永家が嫌なのか未だに反対をしている。


「大丈夫ですか?」


タオルに包んだ氷を純さんの頬に当てる。


「大丈夫じゃないよ。ほんと頑固」

「ふふっ、じゃあ純さんの頑固はお父様譲りなんですね」

「え、俺って頑固?」

「多分」


タオルを当てながら話していると、後ろの扉が開く。
私は振り返ることができなくて、純さんがその人を見上げた。


「西城?」


立っていたのは遥佳様で。
でも遥佳様は入った場所から動かないでいる。


「遥佳様…?」

「どうした?」


純さんの問いにやっと遥佳様は反応する。


「あ、いや…純はどうした?」

「親父にグーで殴られた。なんで分らないんだぁ!って…」

「大丈夫か?」

「なんで分らないんだぁ!はこっちだっつーのって思いながらすいませんって謝って逃げて来た」


ははっ、と純さんが笑う。
もちろん空気は笑える状態なんかじゃない。


「でも、頑張るんだろ?」

「もちろん。美乃梨を幸せにするのは俺だから」
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