月と夕焼け
「優、帰りはどうする?」

「母さんに会いたくないから、適当にホテルに泊まるよ」

「ホテル?」

「ほら、新しくできたんだろ?まだ行ってないから」


うちは大きなグループで色々な企業に手をつけている。
一番儲かっているのが、ホテル営業と不動産だ。


「少し遠いと思うけど…」

「別にいいよ」


俺は、兄さんと話しながら窓の外を見ていた。


「…葉子さんはお前に会いに帰って来るんだろ?」

「でも、俺が会いたくないんだよ?」

「弟は思春期か…」

「どっから目線だよ!!」


気が付いたら兄さんの方を向いていた。
兄さんと話すと何故か、目を見ながら話していることが多い。

多分、これゎ兄さんの技だ。


「三者面談は?」

「学校休むか、沢村に来てもらう」

「沢村さんはお前の保護者じゃないんだぞ?」

「分かってるよ」


沢村は、俺が6歳の頃からの専属運転手。
一番、仲が良いし、俺は沢村のことを親代りだと思っている。

沢村は多分、33歳くらいのはずだ。
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