月と夕焼け
「ははっ、俺も嬉しいよ?佳奈といっぱい話せて。佳奈と出会えて」

「…ありがとうございます」


嬉しくて泣きそうになってしまう。
だけど我慢するために遥佳様に笑顔を見せる。

本当の笑顔なのに、何故か嘘を隠すための笑顔みたいになってしまった。


遥佳様の指の絆創膏は、軽く赤に染まる。

私は割れたコップを片付けてベッドのシーツ替えをする。


「ねぇ、佳奈」

「はい」

「毎日、楽しい?」

「へ?」

「俺は学校に行って友だちと笑って、家に帰って来たら佳奈がいて毎日楽しいけど、佳奈はずっとここにいるでしょ?」

「私も休日には友人と出掛けたりしています。楽しいですよ」

「そうか。じゃあ、今度の休みは俺と出かけよう?というより、明日を休みにしよう」


満面の笑みで遥佳様に言われる。
この人は本当に思ったことはひとまず、行動に移すタイプの人だ。

失敗か成功かなんて、全く考えてないんだ。

結局、次の日に休むのは無理で、でも遥佳様のわがままで3日後に休みをもらえることになった。
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