月と夕焼け
「純、寂しい」

「俺じゃなくて佳奈ちゃんに言えよ」

「避けられてる」

「…よっぽどこたえたんだろうな。立場をわきまえろって言われたの」


その日も純と俺にお茶を出すと、そそくさと佳奈は部屋を出て行った。


「佳奈はもう俺と、笑い合ってくれないのかな」

「無理矢理にでも話せば良いだろ?」

「昨日、そうしようとしたらものすごい悲しい顔されて」

「話せなかった、と」


俺は黙って頷く。
そんな俺を見ながら、純は佳奈の入れたコーヒーを美味い、といいながら流暢に飲んでいる。


「佳奈は俺と立場が違うと思ってる」

「違うだろ。佳奈ちゃんはそれで苦しんでるんだから」

「え?」

「にしても、博愛主義者のお前が珍しいな。一人の女の子にこんなにうろたえるなんて」

「失いたくないと、俺の側にいてほしいなんて思ったのは初めてだ」


この日、純は美乃梨に「西城が、恋を知ったよ」言ったらしい。
けれど俺は、それが恋だとしらずに四六時中、佳奈のことを考えていた。
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