月と夕焼け
それから少し経ったある日の朝、俺を起こしに来た佳奈の腕を無理矢理掴んだ。

佳奈はビックリしたのか、掴まれたままジッとしている。


「佳奈、苦しい?」

「え?」

「俺の側にいるのが」


俺がそう聞くと、佳奈は首を横に振る。


「私は、遥佳くんの側にいたいの。立場が違うって分かってるのに、遥佳くんの側にいたい」


俺を君付けで呼んでくれる。
今の佳奈と俺に、立場なんてあるのか?


「佳奈、聞いて欲しいことがあるんだ」

「何?」


佳奈は優しく、ふわっとした笑顔を俺に見せてくれた。
その笑顔に、俺も自然と全身の力が抜けたような感覚になる。


「俺、昨日美乃梨に言われたんだよ。あなたは恋をしてるのよって」

「え…」

「佳奈、俺は佳奈を愛してるよ。立場なんて、関係ない。佳奈の気持ちが知りたいんだ」


昨日、美乃梨に言われた。
「今日も佳奈ちゃんのことを考えているの?もしそうなら、あなたは恋をしてるのよ。佳奈ちゃんに」
言われた意味が分からずにいると、美乃梨は付け加えた。

「あなたは、佳奈ちゃんを愛しているのよ」と。




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