月と夕焼け
「そうか…。沢村に迎えに来てもらって1人で行くよ」

「悪いな」

「気にすんな」


2人で並んで歩く。
校舎に入った所で、先生に声をかけられた。


「西城くん、伊藤くん」

「おはようございます。何ですか?」


俺ではなくて、誠が返事をする。
俺は先生を見るだけ。


「今日、お客様が来るんだ。2人で迎えてくれないかな?」

「俺たちがですか?」

「10時くらいに来るはずだからよろしくね」

「…分かりました」


そう答える俺に、誠がため息をつく。
何故かものすごく嫌な予感がする。


「あのおっさん、まじで何考えてんだか」

「おっさん呼びは止めとけ。まぁ…今、愛想振りまいとくと将来に有利だろ?」

「俺は、家は継がないからな」

「まだそんなこと言ってるのか?親孝行だと思ってさ」


親孝行をしたいなんて思ったことはない。


「うちには本妻の子の兄さんがいるから」

「まぁ、また改めて話そう。今はあのおっさんに誰が来るのか聞くのが先だよ」


お前だって、おっさんって呼んでるじゃないか…。
そんな事を考えながら職員室に向かった。
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