月と夕焼け
「失礼します」

「西城くん、伊藤くんどうかした?」

「いや、山口先生に今日来るお客様を迎えて欲しいと言われまして。誰が来るのかな、と…」

「テレビカメラよ」

「はい?」


誠が俺の顔を見て来る。
俺も同じタイミングで、誠を見た。


「あのー、山口先生?」

「お、なんだ?」

「俺、テレビ出たらいけないんですよ。西城家の決まりというか…もし出るんなら、ギャラが発生することに」

「あ、俺は大丈夫なんですけど…」


唖然とする山口をフォローするように、誠が喋る。


「先生みたいな中流家庭じゃないんです。俺は利益を生むマスコミにしか出ません。西城家の名を今、汚すわけにはいかない」

「だから、俺一人でやります。もし、そのテレビクルーの方々が優人目的なら、西城家にアポを取らないと」


誠がニコッと笑う。
山口は口を半開きにしていたが、我に返ったのか目を泳がせながら喋った。


「じゃ、じゃあ…今日は二人は良いよ。うん、他の生徒に…」


どうやら、俺の名字を使ってこの学校を日本に売り込むつもりだったらしい。
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