御曹司の秘書さんの日常◆

ふいに、ふわりとサヤカの肩に
先ほど脱ぎ捨てられたサヤカのブラウスがかかる。

「サヤカ、風邪ひくよ。

 
 俺は、もう暖められないからね。」

武は少し困ったように微笑した。

濃いブルーのネクタイをくるりと首に巻いて
指を巻きつけてネクタイを締める。

そういう姿も、悔しいけどかっこいいわ。

サヤカは見惚れている自分自身に
ため息をついた。



「意地悪な人ね。」

「…そうだよ。
 サヤカももうこんな男に引っかかるなよ。
 
 これでも、サヤカには幸せになってほしいと思っているんだ。」


武はサヤカの黒い綺麗な髪を撫でるように指を通した。

「俺は、サヤカを幸せにできないしね。」

「武さん、わたし・・・・・」

「サヤカ。」

武は、そっとサヤカの唇にしぃーっと指を当てた。

サヤカは不覚にもドキンと胸が熱くなる。

武は、できるだけ優しくにっこりと笑った。

「最後ぐらいかっこつけさせて。


 じゃぁ、結婚しても元気で。」



そのまま、武はシルバーのフレームの伊達メガネを装着し
くるりとサヤカに背を向ける。


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