御曹司の秘書さんの日常◆

「あの、仕事を手伝ってほしいとのことでーー」

おずおずと入ってきたのは佐々木だった。
秘書課の新人で、
小柄でかわいらしく、仕事も丁寧で定評がある。


「佐々木君。
 悪いけど、市川の机の書類の分類やてくれないか?」

武より先に昴が佐々木に指示を出す。

もう、仕事モードに切り替わってるし。


「あと、これとこれも、データに打ち込んで…」

なぜ昴が武の仕事まで把握しているんだろうと
武が眉をひそめるぐらい
的確に指示を与える。

「佐々木。頼んだぞ。」


一通り指示が出終わったところで
武が口をはさむ。

「…昴様。私の仕事を押し付けるわけにはーー」

「あ。市川さん。大丈夫ですよ!!
 任せてください!!」

新人の佐々木は、にっこり笑顔でガッツポーズをして見せる。

はー、やれやれ。


武は心の中でため息を吐いた。




「ありがとー。佐々木ちゃーん。
 じゃー俺たち3時の会議にはもどるからさぁー」

んーっと昴が伸びをして
立ち上がった。

急にオフモードになった昴に佐々木が少し動揺する。

「え。あ。はい。行ってらっしゃいませ。」

深々と頭を下げて、ドアを開ける。
昴がすっと外に出て、武がそれに続く。


武は、ドアを開ける佐々木の前で、ふと立ち止まる。

「…じゃぁ、申し訳ないけどよろしくね」

武は、佐々木の耳元で優しく話しかけた。

「はっ…はい。」
声がかるく裏返って、佐々木は顔を真っ赤にした。

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