御曹司の秘書さんの日常◆
「あ!!」
武は思わず叫び声を漏らした。
「川端!?」
「やぁ、市川。久しぶり。」
狭い店内のカウンターのなか、
いらっしゃいと声をかけたのは、
武のよく知る顔であった。
その様子を昴は、にやにやと見まもる。
「こっちにどうぞ。」
案内されて、昴と武は並んでカウンターに座った。
「実は、正樹兄ぃと武が同級生ってわかっていたんだ。」
「…昴様…。川端とはいったいどういう。」
「イトコ。」
昴は愉快そうに言った。
母方の兄弟の子らしい。
「俺は、どちらかというと家業とか無視して
家を飛び出した方だからなぁ。
昴は変わらず俺を慕ってくれるけどーーー」
正樹は少し困ったように悲しそうに笑って
二人分のコーヒーを差し出した。
「武、この店、コーヒーと紅茶とケーキしかないんだぜ。
ふざけているだろう?」
「うるさいなー。今日はおまえが市川を連れてくるっていうから、
ちゃんと、サンドイッチぐらいは用意したぜ?」
正樹は、二人の前に綺麗に盛られたサンドイッチを差し出す。
それが、ツナサンドだったので武は思わず笑った。