御曹司の秘書さんの日常◆
来客用のソファーを勧められて、
武は顔をしかめる。
秘書がそんなところにふんぞり返るわけには行かない。
「…花京院常務。
私は立ったままで結構です。」
「は?」
一瞬驚いて、綺麗なグレーの瞳を武に向けた。
良いから座ってください という再度の言葉に、
武はもう一度首を振った。
「…気になさらず・・・立ったままのほうが良いです。」
「ふぅん。放置プレイが好きなんだな?」
「ーーーは?花京院常務?!」
何を言ってるんだコイツは!?
といわんばかりに武は顔をしかめた。
その表情がおかしかったのか、
腹を抱えながら、大爆笑している。
「あははは。ごめんごめん。
樹兄さんから聞いてるよ。
優秀な秘書の市川武さん?」
にっこり微笑んで、入り口に立ったままの武に近づいてくる。
そして、すっと手を差し伸べた。
「俺は、花京院 昴。
市川武さん、俺は武って呼び捨てにするけど…
花京院常務って呼ばれるのは嫌だな。
昴って呼び捨てにして。」
武は差し伸べられた右手を握りかえした。
「…かしこまりました。では、昴様とお呼びいたします。」
武って呼び捨てにするって…友達かよ。
市川って呼び捨てにしろよ。