御曹司の秘書さんの日常◆
「あなた…昴さんの秘書?」
「…はい。市川と申します。」
椅子に置かれていたバッグを彼女に渡しながら軽く自己紹介。
ふーん。と言いながら、彼女は玄関へと向かった。
「じゃぁ、あなたに免じて今日は帰るわ。
昴さんに、また来ると伝えて。」
気の強そうな彼女は
黄色のさわやかなワンピースをひるがえして、
玄関の扉をガッチャンと乱暴に閉めて出て行った。
はぁ。
疲れる。
なんで、俺が朝からあんな令嬢のために愛想笑いをして、
気を使って服まで着せてやらなきゃならないんだ。
「別途特別手当を支給するから、
そんなに怒るな。」
不意に後ろから声がかかった。
頭を拭きながら、
シャツにまだ結んでないネクタイを下げながら
昴が武の後ろに立っていた。