御曹司の秘書さんの日常◆

沈黙の密室っていうのも
なかなか息が詰まるので、武は彼女に話しかけてみることにした。


「…あの、お嬢様。
 お名前を教えていただけませんか?」

「え?知らないの?
 昴さんに聞かなかったの?」

バカにしたように、しんじらんなーいという
彼女を横目に武はため息をかみ殺した。


「…申し訳ありません」

その、「昴さん」から『バナナ女』と紹介に預かりました。
なんて、言えるはずもなく、
とりあえず武は頭を軽く下げた。

「私は、レイナよ。神原レイナ。」

武は、頭の中で取引先の一覧をめくる。

神原ーーー。あ。製薬会社・・・だったかな。

「レイナさんは神原製薬のーー?」

「そうよ?」

エレベーターが開いたとたん
スタスタと歩いて部屋へと向かう。

なかなかマイペースなお嬢様のようだ。




 
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